てっちゃんと初めて会ったのは、高2の夏。
友達と行った、隣の男子校の学祭でナンパされたのがきっかけだった。
チャラい感じの友達の横で、居心地が悪そうに、むっつりして腕組みを
していたてっちゃんの姿は、今でもときどき夢に出てくる。
背が高くて、色が黒くて、長めの茶色い髪をしていた。
最初は、ただのチャラ男だと思っていたけど、仲良くなるにつれて、てっちゃん
のことをどんどん好きになっていった。
色が黒いのは、日サロ通いじゃなくてサッカー部の練習ばかりしているからだってこと。
動物が大好きで、じつはデートは動物園に行くのが一番好きなこと。
サッカー選手になりたいって、本気で思っていること。
そんなてっちゃんの、すべてがいとおしくて、とても大切だった。
「男友達はたくさんいるのがいいけど、女は1人いればいい」
わたしのくだらない嫉妬が原因でケンカしたとき、私の目をまっすぐに見つめて
てっちゃんが言ったこの一言が、今でも忘れられない。
わたしは嬉しくて泣いたっけ。
幸せな時間は、不思議な力に守られているようだ。
けれど、もう一回と願うと、それは途端にとても複雑になってしまう。
あのてっちゃんの優しい笑顔や、いつもあたたかい手が、今はもう、わたし以外の誰かへ向けられている、
そう思うと胸が痛んだ。
夢を追いかけたくて、てっちゃんから離れたのはわたしなのに。
自分の身勝手さに、苦笑した。